2011年6月26日 ルカの福音書 6：38 「量る量りは？」
序文）私たちは日常さまざまな物や、出来事を量ります。物事の軽重を判断して行動しています。お米を量り、粉を量り、調味料を量って食物の準備をします。人と人のつながりでは、生まれながらの人は、自分を中心にして相手の方と精神的、肉体的距離をはかります。一親等、二親等とか、友人、知人、隣人とか、赤の他人とかいうように。また、それぞれの中でも、相手が自分より賢いとか、賢くないとか，年上だとか，年下だとか，地位が上だとか、部下だとか、いろいろの量りを用いて対応します。そして自分にとって、益になるか、どうかという量りにより、人を裁き、罪に定めたりします。
このような歩み方に対して、聖書はキリストにあって新しく生まれた者は、その量りの中心は自分ではなくて、主イエス様が中心におられることを教えています。生まれながらの肉の思い出はなくて、主イエス様から与えられた聖霊の思いを持って量るようにと勧めているのです。 この歩みが身に付くに従って信仰は成長し、主イエス様に似る者となるというゴールに向かって前進するのです。
わたしたちが，どのような量りで人を量るかということによって、その人の生涯が量られることになり、最終的な量りをその人について行っておられる主イエス様の前に出て本当の姿が露にされる日がくるのです。
Ⅰ 量る量りで返してもらう
１ 主イエス様は「与えなさい。そうすれば自分も与えられます。」と語られました。与える事は減ることではない。与える事により自分も与えられる。人々はその人の生き方を見て量りを良くして押し付け揺すり入れ、溢れるばかりにまでして、懐に入れてくれるでしょう。人生の大変に積極的な部分が、このことばに教えられています。箴言11:24[ばらまいても、なお富む人がおり、正統な支払いを惜しんでも、かえって乏しくなる者がいる]といわれていますが、イエス様のこの教えを経験的に知っていた人々がすでに昔いたのですね。
イエス様はご自分のいのちを世界の罪人たちのために与えてくださいました。その結果、はかりしれない人々が全時代を通じて人種を超えて、全世界から信じるものと変えられて、キリスト者として神から与えられました。（ヨハネ17:6,9）
[与える事は、受ける事より幸いである]とイエス様はおっしゃいました。なぜ、このようにイエス様が与える事を勧めておられるかといえば，神がそのような生き方をする人々に摂理の御手を働かせられる方であることを知っておられるからです。主イエスは、神を量りの中心において、神がどのようにお考えになり、働かれるかを知っておられるので、このように勧め、ご自身も実践されました。
２ この「与えなさい。そうすれば自分も与えられます」を人の罪の部分に当てはめて考えますと、これは大変厳しいことになります。例えばマタイ7:2「あなたがさばく通りにあなたもさばかれ，あなたが量る通りにあなたも量られるからです。」と語られるのです。悪意をもって人のあらさがしをし、批判するものは，自分もそうされるのです。もしあなたがたがあら探しして、批判を浴びせかけた相手が自分よりも上手だったら、その量りはより大きく押し付け揺すり入れ溢れるばかりにして、あなたの懐にいれるでしょう。その結果、あなたは立ちあがれなくなるのです。現に今の世は創世記のレメクのような人々が多く存在するのです。「アダとチラよ。私の声を聞け。レメクの妻たちよ。私のいう事に耳を傾けよ。私の受けた傷のためには一人の人を、私の受けた打ち傷のためには一人の若者を殺した。カインに七倍の復讐があれば、レメクには七十七倍」(創世記4:23,24.)レメクは自分の力の量りに従って報復の罪の量りをもって７７倍仕返しするとすごんでいるのです。くれぐれも罪の量りで行動なさらないように！
Ⅱ 神が量り与えてくださった信仰の量りがあります。
どのようにすれば積極的に量れるようになるのでしょうか？
１ まず、キリストを信じる者として、神が与えてくださった量りをよく知る事が大切です。神は、私たちに神の霊感によって与えてくださったみことば・聖書があります。聖書は信仰と生活の唯一の基準です。神がご自身のみこころについて知ってほしいとお考えの事柄は、全部聖書に啓示されています。聖書は私たちの信仰と生活のただ一つの基準すなわち量りなのです（ウェストミンスター信仰告白１章）。すべての中心に神がおられます。
２ 私たちがどのように他の人を量るかということは，実は神が私たちをどのように量られるかということと比例するのです。ですから、信仰の量りを用いて量るか、そうではなく生まれながらの肉の思いで量るかということは、神があなたを量られるときに影響をおよぼすのです。このことの例としてルカ7:36からに出てくる「罪の女」と「パリサイ人シモン」に目を少しむけましょう。連続講解ですから、いずれ７章に入って詳しく説教しますが、今は例証として簡単にみましょう。
「罪の女」は主イエス様から罪を多く赦してもらった事を知っていました。それで、主イエスさまが食卓に着かれたときに「香油の入った石膏の壷をもって来て、泣きながらイエスのうしろで御足のそばにたち涙で御足をぬらしはじめ、髪の毛でぬぐい，御足に口づけをし，香油を塗りました。」主をおおく愛し，主にお仕えしたのでした。他方シモンは自分の家にお客として主イエス様を招きながら、心の中でこの方が預言者なら，自分にさわっている女は誰で、どのような女であるか、知っておられるはずだ。この女は罪深い者なのだから。」と密かに思った。主イエス様の足を洗う水も出さない。挨拶の口づけもしない。頭に香油を塗る事もしなかった。かえってイエスにも女にも自己批判を要求している。心の中で、さらに事と次第によっては二人を吊るし上げてやろうと思っていた。
「罪深い女」だとシモンに量られた彼女は、自分が主イエスによって，どのように量られ、赦され，愛されているかを量った。そのとき，彼女は正しく量っただけではなく、それを他に人にも及ぼそうとした。量り知れない神の赦しと愛とあわれみを知って心からの愛と奉仕を主に豊かに溢れだし注ぎだしました。他方シモンは神の量りで量る事をしないで、自分中心の量りで量り、百歩ゆずっても神の量りを浅はかに量った。結果、必要最小限の愛と奉仕、否！否！それ以下！の愛と奉仕しか、主イエス様に表しませんでした。しかも、「罪深い女」と見下しているのです。暴いているのです。
主イエス様は、この罪の女に「あなたの罪は赦されています、」と宣言されたのです。そして「あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい。」といわれました。
私たちのはかる量りで、神が量っておられる事がお分かりでしょう。私たちが本当に罪赦された幸いを喜び感謝し十字架の犠牲を持って救われたことの豊かさを受け止めたとき、主イエス様のみからだである教会、その構成員である兄弟姉妹に対して、この女の人のようにこころから愛と奉仕が注ぎだされる事を思います。
Ⅲ さて信仰の量りによって、そのように生活して行く者はパウロが示している姿勢を身につけてゆかねばなりません。ローマ12:3[私は自分に与えられた恵みによって、あなたがた一人一人に言います。限度を超えて思い上がってはいけません。いや、むしろ神がおのおのに分け与えてくださった信仰の量りに応じて慎み深い考え方をしなさい。]慎み深い考え方をすることによって、神の量りを量ることによってますます謙遜に気前よく歩む道が開けてくるのです。それは健全な自己評価です。自分を信仰の量りで量る事は、神が与えてくださっている賜物を正当に評価することです。
結び）「エレミヤ32:17〜19」天と地を造られた神は、恵みを千代に至まで施すお方であります。その量りは大きく豊かで人それぞれの行き方に従って、行いの結ぶ実りにあいたがって、すべてに報いをされるのです。信仰の量りを持って、主イエス様を中心に感謝と喜びと愛と奉仕を込めて、それぞれのたくされた実にわずかな地上生涯を全うさせていただきましょう。